> ゲームボーイの歴史

ゲームボーイポケット誕生秘話



●ポケモンとは無関係に作られたゲームボーイポケット

「今度は胸のポケットに入るくらい小さくしようよ」という横井軍平氏の言葉を目標に、ゲームボーイを小型化して発売されたのがゲームボーイポケットです。これはバーチャルボーイがあまり軌道にのらなかったため、横井軍平氏が予定していた退職を延ばして作った「任天堂への置き土産」でもありました。

もともと横井軍平氏はゲームボーイをポケットのサイズにしたかったそうですが、諸事情から1989年時点では実現しませんでした。また、知人が携帯電話を「以前は大きくて嫌だったけど、ここまで小さくなったから」という理由で購入したのを見て「ゲームボーイを小さくすれば新しいユーザーが増えるかもしれない」と考えました。商品化もすぐできるだろうと見込んで、ゲームボーイポケットの開発は始まりました。

ゲームボーイポケットは「小ささ」というコンセプトを追求して作られました。単4電池が電源に採用されたのもそのためです。ゲームボーイポケットの開発時に、マリオの生みの親である宮本茂氏は「なぜ単三電池を使わないのか」と何度もいったそうですが、横井氏は「これは小ささを追求したいんや」と受け入れませんでした。電池寿命については「単四で10時間」を目安にしたと語られています。

もうひとつ、ゲームボーイポケットはポケットモンスターとはまったく無関係に開発が進められていた商品でした。どちらも名称に「ポケット」がつき、発売年も同じなので初めから絡んでいた商品とみられがちですが、そうではありません。ポケットモンスターはもともと「カプセルモンスター」というタイトルでしたが、商標で使えないことからポケットモンスターに変更したという経緯があります。一方、ゲームボーイポケットは小型化とコスト削減のため、パワーランプと通信コネクタを無くす方向で作られていました。

結局はソフト屋さんの猛反対にあって、ゲームボーイポケットの通信コネクタはサイズを小さくして残すことになりましたが、本当に外されていたらゲームボーイとポケモンの関係は一体どうなっていたのか、けっこう紙一重な出来事だったといえるでしょう。結果的にはゲームボーイポケットは人気が急上昇していたポケモンと高い相乗効果を生み、大ヒット商品となりました。横井軍平氏も安心して任天堂を退社できたといいます。

ちなみにパワーランプはそのまま消えましたが、これは失敗だったと分かり、後で出荷されたゲームボーイポケットではランプが復活しています。


「原価は一円でも安く運動」みたいなものがありました。初期のGBポケットにパワーランプがついていないのはそのせいなんです。ほかにも通信コネクタをはずそうという話もあったんです。このようなパーツは量産しても値段が急に下がるものではないので「通信コネクタはいらん」という人もいたんです。それにこれを省くことによってもっと薄くできるというメリットもあったんですね。
(任天堂開発一部部長・出石武宏氏、The 64 DREAM「ゲームボーイ10年間の歩み」より)


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